この度、小坂洋右氏著の『アイヌの時空を旅する——奪われぬ魂』が、
第36回和辻哲郎文化賞（一般部門）を、受賞いたしました。
小坂先生ご本人からの受賞のお言葉を掲載させていただきます。
【受賞のことば】
このたびは栄えある賞をいただけることになり、大変光栄に存じます。和辻哲郎文化賞といえば、冠されている和辻哲郎氏並びに選考委員諸先生の重みに加えて、歴史観を培ううえで私自身が幾多のご指導をいただいてきた保阪正康先生が受賞されており、身が引き締まる思いです。
拙著『アイヌの時空を旅する――奪われぬ魂』は、北海道や樺太・千島列島に、本州以南の稲作農耕文化地域と異なる狩猟・採集・交易に基づくアイヌ民族の社会があり、言葉も自然観も地理的概念も歴史観も異なることを、いにしえの「川の道」「海の道」や「新天地への道」を小舟や山スキーでたどりながら浮かび上がらせようと試みたものです。その過程で、日本とロシアの国家勢力拡大という大きな歴史のうねりに翻弄され、抑圧や収奪を受けつつも、それに屈しない強靱な精神力を保ち続けてきた北方民族の姿もまたイメージできました。
この受賞が、アイヌ民族のそうした歴史・文化、生き方、復権への志を国内に広く知らしめるとともに、今を生きる人々に勇気を与える契機となってくれればと願っております。ありがとうございます。
2024年2月 小坂洋右
